Since 1996

2019年読書レビュー

年も押し詰まり、2019年読書レビューです。
今年は72冊、67作品を読みました。(上下巻などは1作品とカウントしています)
何気に年間50作品を超えられたのは数年ぶりです。
今年は色々と記憶に残る作品が多かった。
年明け、いきなり高橋治氏の訃報が入ってきました。自分は学生時代、桃尻娘シリーズを読んでいました。橋本治氏の著作を何か一つと、「蝶のゆくえ」を読みました。表題作は幼児虐待を取り上げ、虐待されている幼児側の視点で描いた作品です。

蝶のゆくえ (集英社文庫)


今年の前半はカミさんが「半分青い」にはまっていて、ドラマの中に出てくる少女漫画家の作品として くらもちふさこ さんの作品が使用されていました。これも中学、高校生の時に愛読した作家です。そしたらなんと作者本人が自作にコメントしていくという「くらもち花伝 メガネさんのひとりごと」が出版されてました。

くらもち花伝 メガネさんのひとりごと


一方で、タイトルに惚れて中島京子さんの「夢見る帝国図書館」を読んだら、たまたま「エクスリブリス ニューヨーク公共図書館」という映画がl公開されてました。映画は間に休憩時間を挟む3時間越えのドキュメンタリー大作ですが、日本でイメージする図書館とは異なるその姿、そしてそれが多く人の寄付で支えられているというアメリカという国の懐の深さに驚かされました。ある意味、今年見た映画のベスト1でもあります。

夢見る帝国図書館


また、ノンフィクションという意味ではニューヨークの医師が書いた「死すべき定め―死にゆく人に何ができるか」がよかった。医療の限界と、残された余命を意味あるもの、人として死んでいくために医療ができること、なかなか考えさせられる本でした。

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか


死というテーマではいとうせいこうさんの「想像ラジオ」よかった。この小説は他に似た小説がない。特殊だけど、普遍なものをとりあげた稀有な小説だとおもう。

想像ラジオ (河出文庫)


翻訳ものが好きな自分としては今のトランプ政権を想像させる近未来のアメリカを舞台にしたディストピア小説、クリスティーナ・ダルチャー「声の物語(原題"VOX")」も良かった。

声の物語 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)


そして、今年はナチスドイツから徹底的な排斥を受けたユダヤ人を主人公にした小説を多く読みました。もともと興味のある分野ですが、今年は多かった。佐藤亜紀さんの「スウィングしなけりゃ意味がない」、深緑野分さんの「ベルリンは晴れているか」。特筆するべきはこれら2作品が日本人が書いた小説であるということ。とてもそうは思えない、翻訳文学を読んでいるような味わいでした。

スウィングしなけりゃ意味がない (角川文庫)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 


で、ベスト1は、これもナチスによって強制収容所の送られた魔術師が登場する小説、今年最後に読み終わったエマヌエル・ベルクマンの「トリック」です。本を買ったのは春頃だったと思いますが、なかなか読むタインミングが来なかったのですが、今年中に読んで良かった。

トリック (新潮クレスト・ブックス)

来年もあまり選り好みせず、食わず嫌いせず、気になる本をどんどん読んでいきたいと思います。