Since 1996

告白

そう、実感がない。

10月の半ばに親父が死んだ。

そもそも20年以上も透析を続けていたりして、身体に色々問題は抱えていたが、そこそこ元気だった親父が死んだ。

その日の朝まで、日課になっていたらしい散歩もして、透析も行ったらしく、特に普段と変わりなかったらしいのに、唐突に夜に死んだ。

お袋から電話が来たのは夜の7時3分前。

なぜそこまで覚えているかというと、7時から友だちとzoom飲み会をすることになっていて、酒のつまみ代わりのピザトーストを焼きながら、おっとあと3分しかないじゃないかと思っていたところに電話が来て、電話をとったカミさんが、顔面蒼白で「お父さん、亡くなったって!」と叫んだからだ。

そういえばあのピザトーストどうしたっけ?

それから慌てて支度をして、カミさんに運転してもらって、実家に着いたのは夜中の3時だった。

親父は既に安らかに眠っていた。

そこからは朝を迎えて通夜の準備、その翌日に葬儀で、焼き場に行って、骨になった親父を迎えに行って。

 

あっというまにこの週末は四十九日だ。

 

しかし、それでも実感がないのだ。

ただ、よく言う、「まだ親父が生きて、電話とかしてきそうな」とかそういうのじゃない。

親父は死んだ。冷たくなっている姿も見たし、肌に触れもした。通夜の夜はその側で眠った。

死亡届も見たし、親父名義の銀行口座、携帯電話の解約、お袋が親父名義の土地を相続するために必要な戸籍謄本を取るための手続きとか、諸々の事務手続きの段取りもカミさんと一緒にやった。

でも。

でも、なんだろう。

その後の日常に何一つ変化はないのだ。

止まれ。僕と親父の仲は全く問題はなかったよ。普通の親子だったと思う。親父は偉い人だったなぁと思う事だってあったんだよ。

 

ただ何事もなかったかのように電車は行き来し、僕は通勤し、休みの日は少し遅くまで眠る。本を読み、映画を見たり、台所に立ったり、ほぼ変化がない。

その、どこかの瞬間に親父を思い出すこととか、それで亡くなった事に涙を流すとか、そういう事がない。

今年の初め、小学校の同級生が急に亡くなった事を知らされた時の方がショックだったし、しばらくすると訳もなく涙が流れてきたのにね。

 

お父さん、僕は冷たい息子なのかねぇ。