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孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生:ロバート・D. パットナム 著 柴内 康文 訳 柏書房

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生
孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生
社会関係資本」とはアメリカの国民の草の根的なコミュニティやグループの活動を意味する。社会関係資本は40年代から60年代にかけてアメリカ国内で増え続け、それが政治への関心の高さや、地域社会の安全性を保っていたが、60年代以降現在に至るまでそれらの社会関係資本がアメリカから姿を消しつつあり、アメリカの力を削ぎつつある。アメリカはフォーマルな活動においても、インフォーマルな活動においても近隣との緊密な関係を失い、内向的で、保守的になりつつある。それを、ボーリング場でボーリングリーグ(グループで行うボーリングゲーム)に参加しつつも、ボーリング場のモニタに映るテレビ番組を見ながら孤独にボーリングを続けている姿に例えている。
著者はその理由を綿密な調査により明らかにし、その対策を考えようとしている。素晴らしいのは、コミュニティの衰退の原因を安易な連想(人種間の問題、女性の社会進出、等々)に求めず、むしろ可能な限りデータを収集して分析することで、そのような安易な結論を一つ一つ検証し、時には否定していることである。翻訳を担当した柴内氏も健闘していて、膨大な巻末資料も省略せずに丹念に訳している。
巷に蔓延している安易なイメージや、連想による、非常に分かり易くて、飲み込み易い割には何の裏打ちもない社会論を読んで満足している人達にも是非、この大作、秀作を一度読んで欲しい。