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原子爆弾―その理論と歴史

原子爆弾―その理論と歴史 山田克哉(著)
2006年は空前の新書ブームの始まりだったようだが、文学系新書の大御所が岩波新書だとすれば、科学系新書の雄は“ブルーバックス”ではないだろうか?ブルーバックス読んでると、なんとなく理科学系の人という気がする。
本書は核分裂などの仕組みを平易に解説しながら、原子爆弾開発に至る研究の経緯を解説した本。原子爆弾の開発の経緯について書かれた本としては、その総合力において原子爆弾の誕生(上) リチャード ローズ(著)原子爆弾の誕生(した) リチャード ローズ(著)の右に出るものはないと思う。しかし、「原子爆弾の誕生」が一般のジャーナリストによって書かれたために、科学的な解説よりも原子爆弾開発プロジェクトの人間関係、推移に重点が置かれているのに対し、本書は“理科学系”なので、科学的な背景や原理をわかりやすく説明することに重点をおいている。よって「原子爆弾の誕生」において、あまり説明がなく、いまひとつ理解できなかった部分等がよくわかる。
本書はブルーバックスの中では厚い本だと思うが、あの重厚な「原子爆弾の誕生」であれば、本書を補助的なテキストとして読んでもいいのではないかと思う。