Since 1996

ゾルゲ事件ヴケリッチの妻・淑子

Amazon.co.jp: ゾルゲ事件・ヴケリッチの妻・淑子―愛は国境を越えて: 片島 紀男: 本
ゾルゲ事件・ヴケリッチの妻・淑子―愛は国境を越えて
片島 紀男 著 ISBN:4886835945 出版社: 同時代社
丁度数年前ゾルゲ事件から60年を迎え、映画も製作され話題になった。実は当時、NHKでも特集番組が組まれた。その中の一つにゾルゲ本人ではなく、彼のスパイ活動を支える仲間であったブランコ・ド・ヴケリッチという通信社に勤める記者と、その妻であり、日本人でもあったヴケリッチ淑子さん取材したものがあった。
ヴケリッチはゾルゲとともに逮捕され、終身刑になり、後に北海道の網走刑務所に送られる。そして、終戦の年の1945年の初め、あと半年もすれば終戦という時に病気で獄中死する。
番組中で彼女は網走刑務所に亡骸を受け取りに行った時の様子を語りながら、涙を流すシーンは印象的だった。また、ヴケリッチが獄中から彼女や、彼女との間にもうけた子どもに対して書いた手紙にあふれる愛情にも心打たれるものがあった。それは「スパイ事件」というものと、夫婦、親子の愛というものの一見アンバランスなもののせいかもしれないし、それをただ闇雲に否定する戦争というものの恐ろしさのせいかもしれない。
2006年、ヴケリッチ・淑子さんはその辛かった生涯を閉じた。彼女が最愛の夫から受け取った手紙の束は彼女の遺骨とともに墓に納められたそうだ。