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インディアナポリスの鮫 五十嵐均 読売新聞社

インディアナポリスの鮫
アメリカの巡洋艦インディアナポリス。それはアメリカ本土からテニアンまでリトルボーイとファットマンの二発の原子力爆弾を輸送した船であり、輸送完了直後の航海で日本の潜水艦によって撃沈され、多数の死者を出した悲劇の艦船としてアメリカ人の記憶に残っている。
原子爆弾開発に協力し、インディアナポリスに搭乗していた黒人技術者が原爆投下後のヒロシマで刺殺体として発見される。一方でインディアナポリスを撃沈した潜水艦の乗組員だった日本人が同じ日に射殺体となって発見される。両者の間に関係はあるのか?技術者の恋人と乗組員の孫娘が50年後のヒロシマでそれぞれの死の謎を協力して調べ始める・・・。
小説としての着想は面白いと思うのだが、人物の掘り下げが今ひとつで物語に深みが感じられない。戦後50年の節目として書いたという割には、設定のアイデアに負うところが大きくて、膨らませ方が今ひとつ。