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ベトナムの泥沼から デイヴィッド・ハルバースタム 著 泉 鴻之、林 雄一郎 訳

ベトナムの泥沼から
ベトナムの泥沼から
故・デイヴィッド・ハルバースタムは、まだ記者として働き始めたばかりの頃、ニューヨーク・タイムズ社の特派員記者としてベトナムに赴任した。そして、彼の地で南ベトナムのゴ・ディン・ジエム政権とアメリカ政府が伝える「公式見解」の欺瞞を暴き、ベトナム戦争の真実を報道するために奔走し、その功績によってピューリッツァー賞を受賞した。本書はそのベトナムでの彼と、一緒に取材を続けた他の記者達の活動を綴った記録。彼がベトナムに赴任していたのは、ゴ・ディン・ジエム政権が倒され、グエン・カーン将軍のクーデターが起きた直後までなので、その後のトンキン湾事件から北爆という本格的なアメリカの介入が始まる前、すなわち現在のベトナム映画等で描かれるベトナム戦争の前哨である。しかし、その時点において既にハルバースタムはアメリカ政府が後押しする南ベトナム政権の危うさや、欺瞞に気づき、一方でアメリカ政府がそれに気づきつつも、方針を変える事ができない「泥沼」に足を踏み入れてしまっている事を指摘している。
原題は“The Making of a Quagmire”(「泥沼が作られて行く過程」)。