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国防長官はなぜ死んだのか -フォレスタル怪死と戦後体制の大虚構- コーネル・シンプソン 佐々木槙訳 太田龍 監修 成甲書房

国防長官はなぜ死んだのか -フォレスタル怪死と戦後体制の大虚構-
国防長官はなぜ死んだのか -フォレスタル怪死と戦後体制の大虚構- (発掘!アメリカの嘘)
大戦後に創設されたアメリカの国防総省の初代国防長官 ジェームズ・ヴィンセント・フォレスタル(James Vincent Forrestal)は国防長官を退任したあと、鬱病の治療のために入院していたベテスダ海軍病院で投身自殺によって命を絶った。この自殺が共産主義者による謀殺であるとするのが本書。
ただし、共産主義者による謀殺はフォレスタルに留まらず、マッカーシズムで有名になったジョセフ・マッカーシー(病死)も含め、当時の反共主義者の多くが共産主義者の謀略によて命を絶たれたのみならず、ホワイトハウスを含め、米国の主な高官達も当時の米ソ冷戦構造の中で反ソであるかに見せかけて、実は共産主義に協力する邪悪な影の権力の使徒であるとする一大謀略説になっている。
本書が発刊された1966年当時、邪悪な権力に味方するマスコミからは黙殺されたという事だが、確かにフォレスタルの自殺には謎の部分がある事は認められるが、本書の理論の展開は状況証拠に対する独断や、類似の事件を数多く挙げ、似ているからこれも怪しいとしているに過ぎず、某略説を証明するだけの論拠に乏しい。
また、1966年の発刊から40年以上を経て、その内容に関して色々と見直す点も多々あると思われるが、それを一切せずに日本語訳を出す意味もよくわからない。