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しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫):佐藤 多佳子 著 新潮社

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)
しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)
落語が好きで弟子入りし、今は二つ目の噺家 今昔亭三つ葉。短気で単純だが、妙に情には厚いお節介焼き。ひょんな事から吃音癖のある幼なじみ、話し方教室で何も話そうとしない黒猫みたいな女性、関西弁が抜けない小学生、喋れない野球解説者を相手に落語教室を開く事に。みんなから頼りにされつつも、本当のところは自分自身も落語の壁にぶち当たっていて、他人に落語を教えている場合じゃないのだが・・・。
東京落語の噺家の世界が舞台だが、特にそっちの知識が無くても充分楽しめるし、そもそもこの作家は文章が旨い。文章表現にリズムがあるし、ちょっとした登場人物の所作の描写が話の合間に挿入されて、物語のアクセントになっている。読むものをぐっと引きつける力がある。もう一冊読んでみたくなる作家。