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冷血:トルーマン カポーティ 著 佐々田雅子 訳 新潮社


農場を経営する四人家族がそのむごい運命を知らずに過ごした最後の1日。そして、その家族を散弾銃で次々と殺害した二人組の男達が、犯行の後、逃亡の果てに逮捕されて、死刑判決を受けて絞首刑になるまで。「ティファニーで朝食を」などで売れっ子作家であったカポーティが実際に起きた事件を自ら取材し、数年の歳月をかけて世界で初めての「ノンフィクション・ノヴェル」という形式で発表したのがこの「冷血」だ。数年前に旧訳の「冷血」を読んだ。今度の新約は文章がすっきりした分、読みやすくなった気がするものの、ちょっとあっさりしすぎた感じがしないでもない。ただ、読後感としては犯行のあったホルカムという土地の荒涼とした寒々しさが残る。