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アレン・ダレス 原爆・天皇制・終戦をめぐる暗闘:有馬 哲夫 著 講談社


アレン・ダレスはアイゼンハワー政権=冷戦時代のアメリカCIA長官としての顔が最も有名だろう。CIAの草創期を支えたCIAの顔でもあり、ケネディ政権に変わって、キューバのピッグス湾侵攻作戦が失敗に終わった時、その責任を問われてケネディからCIA長官を解任された事でも有名である。本書はそのアレン・ダレスの第二次世界大戦に於ける日米の終戦交渉工作への関わりについて書かれたものだ。終戦末期、敗色濃厚となった日本では政府がソビエトを仲介として終戦交渉を試みていた(ソビエトは交渉に応じる気はなかったが、その後の日本への宣戦布告をカモフラージュするための引き延ばし作戦をとり、英米はその交渉の暗号電文を全て解読していた)が、スイスなどの中立国に滞在する官民の有志は個別に米英との終戦交渉を行っていた。そこに、その交渉を現場でコントロールする人物としてアレン・ダレスが関与しいたという訳である。当時の米国政府内では無条件降伏という原則を主張する反日派と、今後の占領政策のため(反共の防波堤として日本を利用するため)天皇制の温存など国体護持を保証するべきと言う親日派が対立していた。後者に属するアレン・ダレスは日に日に反日派の勢力が強まってくる中で、何とか終戦への道を開こうと奮闘する。
ここでは、アレン・ダレスが決して天才的な活躍をするヒーローではないが、地道に成果を積み上げていく苦労人とも言える人物として描かれているのだが・・・以前に読んだ「CIA秘録」では諜報の基本である情報収集や分析よりも、秘密工作に傾倒しすぎ、事態の悪化をまねく事が多かった(その後のCIAの失敗の歴史を決定づけた人物)として描かれた気がしているので、それと比べるとちょっとギャップが在ります。