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13日間で「名文」を書けるようになる方法:高橋源一郎 著 朝日新聞出版


明治学院大学で「言語表現法講義」という講座を持っている作家・高橋源一郎氏の、その13回の講義(休講1回含む)と1回の補講の記録。タイトルがハウ・ツー本っぽくなっているが、「言語表現法」という講義名にあるように、これはいわゆる「名文」を書くためのハウ・ツーではなくて、書くという事、表現するという事、読むという事、言葉というもの等々について、感じて、考えて、実際にやってみて、「うーん、よくわからない」と呟くための本だと思う。登場する聴講生達はすべて「イマドキ」の学生達なので、教授である源一郎氏との会話でも「マジっすか」みたいな単語が飛び出してくる。しかし、一方でそういう言葉を操りつつも、彼らが発表する(発表させられる)自分たちの書いた文は「えっ」と思うほど古典的であったり、新鮮であったり、全然素人に思えないようなものだったりもする。今年読んだ本の中では最も意外性の大きかった(良い意味で)作品。
ちなみに、「休講1回」は偶然ではあるがこの講義の記録の中でとても大きな意味を持つ。それ自体は「言語表現法講義」と直接は関係は無いものだが、講義のテーマとは切り離せないものだ。しかし、それ自体を強調することは源一郎氏の本意でもないと思うので、ここではその内容については書かない。是非、読んで、この講義に参加して、その休講の意味を感じ取って欲しい。