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ランド 世界を支配した研究所 アレックス・アベラ 著 牧野 洋 訳 文藝春秋


第二次大戦直後の1946年にまだ米国陸軍の一部でしかなかった空軍の戦略立案と研究のために設立されたシンクタンク、ランド研究所(Research ANd Development)。ランド研究所の研究は東西冷戦を背景とした核抑止力、核戦略を中心に米国の対ソ戦略にめざましい成果をあげていく。またその成果の多くは民間にも普及していている。システム分析、ゲーム理論、フェイルセイフ、等々は全てランド研究所の産物であるという。
ランド研究所のスタッフや関係者は必然的に米国の政治の中枢にも深く関与していく。ロバート・マクナマラが国防長官となり軍の合理化を進めたとき、その手足となって働いたのはランドのスタッフであった。また、ランドに何らかの形で関わり、その後大きな勢力となったものはいわゆる「ネオコン」と呼ばれる保守派で、コンドリーザ・ライスドナルド・ラムズフェルドディック・チェイニーなどはランドとの関係も深い。つまり、ベトナム戦争、9.11テロを含むイラク戦争にも深く関係しているという処はランドの負の一面といえる。