Since 1996

トルーマン・カポーティ 上/下 ジョージ・プリンプトン 野中邦子 訳 新潮社

トルーマン・カポーティ 上 トルーマン・カポーティ 下トルーマン・カポーティ〈上〉 (新潮文庫)  トルーマン・カポーティ〈下〉 (新潮文庫)
トルーマン・カポーティといえば「ティファニーで朝食を」が日本では最も有名だろうし、僕もそれと「冷血」しか読んだ事が無かった。「ティファニー・・・」については、映画も見たが、映画より小説の方が好きだった記憶がある。
昨年だったと思うが、本書をベースにした「カポーティ」という映画が公開された。「冷血」の事件を取材し、作品を発表するまでのトルーマンの姿を描いたドラマで、DVDを借りて観たが、結構面白かった。
実はトルーマンを最初に知った(見た?)のは「名探偵登場」という映画だ。学生時代にレンタルビデオで見た事がある。アンチ・ミステリィ推理小説パロディ映画で、世界中の有名な名探偵を或る館に一堂に集めてパーティが開かれる。その冒頭で殺されるホスト役の怪しい老人を演じているのがトルーマン・カポーティなのだ。本書で当時を辿ると、「叶えられた祈り」のスキャンダルで名士とのつながりを失い、斜陽に入り、体調もそれほど良くなかった頃にあたると思われる。映画の登場時間も数分程度だが、それでも非常に印象に残るキャラクターを見せていた。
文庫本は上下巻に分かれているが、上巻の勢いがあり、輝いているという感じまで伝わってくるトルーマンに対して、下巻は迷いがあり、明らかに光を失っていくトルーマンが描かれている。上巻でトルーマンの魅力に取り憑かれた読者は、下巻の淋しさに溢れるトルーマンに胸を痛めるだろう。