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ピギー・スニードを救う話 :ジョン・アーヴィング 著 小川 高義 訳 新潮社

ピギー・スニードを救う話
ピギースニードを救う話 (新潮文庫)
ジョン・アーヴィングといえば「長編小説の人」である。しかし、実はその長編小説の中の作中に、登場人物が書いた小説(もしくは、小説の一部)というものがよく出てくる。これはある意味で、アーヴィングが書いた短編小説であると言える。
本書はアーヴィングの短編小説や随筆などを収めた一冊。アーヴィングの創作、創造力の根底にある動機を描いたとも言える表題作の「ピギー・スニードを救う話」は、アーヴィングの小説を読む楽しみと同じくらい、アーヴィングが本当にピギー・スニードを題材にして小生を書いたとしたら、ここからどういう話を引き出してくるだろうと想像させて、楽しませてくれる。(ちょっと哀しい話であることは忘れがたいのだが)
また「小説の王様」ではアーヴィングの原点でもあるチャールズ・ディケンズへの愛情に満ちあふれている。「小説の王様」というフレーズ自身が、「サイダー・ハウス・ルール」でウィルバー・ラーチやホーマー・ウェルズが孤児院の子供達に対して、就寝前にディケンズの本を読み聴かせたあと、語りかける「メイン州の王子、ニュー・イングランドの王」というフレーズを思い起こさせる。