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昭和天皇と戦争―皇室の伝統と戦時下の政治・軍事戦略: ピーター・ウエッツラー 著 森山 尚美 訳 原書房

昭和天皇と戦争―皇室の伝統と戦時下の政治・軍事戦略
昭和天皇と戦争―皇室の伝統と戦時下の政治・軍事戦略
著者自身が述べているように本書はピューリッツァー賞を受賞し、それまでの昭和天皇像を一新したハーバート・ビックスの「昭和天皇」に対する反論でもある。「昭和天皇」の昭和天皇像をビックスの独断による、ビックスの想像する昭和天皇にすぎないとしている。そして、昭和天皇が日本の政策の決定に積極的であったという解釈は変わらないものの、昭和天皇の行動の動機は「皇統」、「皇室」を存続させることにあり、彼にそういう動機を植え付けた原因を彼が受けた教育にあったとしている。
本書の主張そのものは非常に説得力があるし、終戦前後の昭和天皇の立ち回り方を説明する上でも矛盾が少ないように思われる。ただ、もっと多くの史料にあたり、掘り下げる事も可能な観点であるとも思える。