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エーテル・デイ―麻酔法発明の日 (文春文庫):ジュリー・M. フェンスター 著 安原和見 訳 文藝春秋

エーテル・デイ―麻酔法発明の日
エーテル・デイ―麻酔法発明の日 (文春文庫)
1846年10月16日マサチューセッツ総合病院において、町の歯科医師に過ぎなかったウィリアム・モートンは外科医師に招かれ、首の腫瘍の切除手術を受ける患者に対して硫酸エーテルを用いて麻酔をかけた。これが歴史上に記録される最初の公式の麻酔手術だった。
しかし、歯科医師であったウィリアム・モートンは、以前から抜糸にエーテルを用いていたし、そもそもそれは彼が歯科医師としての修行をした先輩医師ホーレス・ウェルズから得た知識であった。モートンの麻酔術が有名になると、更に化学者のチャールズ・ジャクソンが、ホーレス・ウェルズにエーテルの効用を示唆したのは自分であり、麻酔術の発見者の名誉は自分にあると主張し始める。
ウィリアム・モートンがエーテルによる麻酔薬の特許を取得し、その富と栄光を独占しようとするに至って、医術の世界が望んでやまなかった麻酔術の発見の名誉を求めて三人の人物が争いを始める・・・。
彼らの争いをよそに、麻酔術そのものは数多くの医師、数多くの国に広まり、どんどんと改良が加えられていき、その名誉を独占することはできない状態になっていったこと、争った三人が揃って不幸な人生を送ることになったことは皮肉と言える。