スティーブ・ジョブズの流儀：リーアンダー ケイニー 著 ランダムハウス講談社

スティーブ・ジョブズの流儀

今やiPodとiPhoneで世界を席巻しているApple社のCEO　スティーブ・ジョブスの評伝。Macintoshを世に送り出した直後に自分が起業した会社を追われたにもか関わらず、10年後にその会社に救世主としてカムバックし、見事に前以上の成功をもたらしたジョブスは、その若い頃の奇行、傍若無人な振る舞いが祟ってか、カムバックした直後からも、その人物評に関しては否定的な見解が多かった。有名な「エレベータの中で乗り合わせた社員に、今の仕事を説明させ、満足した答えが得られなかったらその場で解雇した」という逸話が本書の中でも出てくるが、その真実味については懐疑的だし、そんな風に解雇された社員を見た事がないという話も出てくる。
僕自身も、たぶんアップルを起業した頃のジョブスならそういう事もあったろうが、今のジョブスに関しては誇張されたデマだと思っている。例えば、2005年にジョブスがスタンフォード大学の卒業式において行ったスピーチを読めばわかる。彼は自分の夢に対する＜熱さ＞を失うことなく、大人になったのだ。だから、こだわり抜いた特徴的な製品を生み出し、成功を引き寄せ、威嚇でなく尊敬を以て優れたチームをまとめ上げているのだと思う。