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日本は原子爆弾をつくれるのか (PHP新書) (新書):山田克哉 著 PHP研究所

日本は原子爆弾をつくれるのか
日本は原子爆弾をつくれるのか (PHP新書)
原子爆弾、すなわち原子核分裂のメカニズムを平易に説明しつつ、それを応用して平時の平和利用だけではく、軍事利用として原子爆弾を開発するためには、どういう技術が必要か?果たして日本にその技術があるか?という事に言及した本。
原爆開発の記録の決定版と言っても良いリチャード・ローズの「原子爆弾の誕生〈上〉原子爆弾の誕生〈下〉」の中でも、仕組みがシンプルなウラニウム原爆(広島型原爆)に対して、プルトニウム原爆(長崎型原爆)の「爆縮レンズ」というメカニズムの開発に苦労し、本当に動作するかどうかを確認する必要があった(このために長崎投下に先立って7月に実験が行われた)事が強調されているが、本書の中では「爆縮レンズ」に関しては「光学技術」と通ずる部分が多く、日本の技術力があれば今より小型の爆縮レンズが作れるのではないか?とする一方で、原爆のまさに「核」となるプルトニウムの精製において日本では平和利用(エネルギー源)として利用できるレベルの濃縮技術はあるが、兵器利用のための濃縮技術は満足に稼働する施設もなく、IAEAの査察など国際関係の維持の面からも難しいとしている。
しかし、本書が何よりも読みづらいのは、同じ記述の繰り返しが非常に多いと思われる点だ。物理学素人向けの書籍なので、平易に書く、ポイントを繰り返すという意識がある事は認識できるが、それにしてもちょっと多すぎる。ひょっとするとこれは草稿レベルのものをあまりチェックせずに出版してしまったのではないか?ということだ。著者は「原子爆弾―その理論と歴史 (ブルーバックス) (新書)」という非常に良くまとまった著作もあるので、それと比べた時の質のギャップが激しいのが残念。
(「原子爆弾ーその理論と歴史」の焼き直しでは?と感じる部分もあるので、そもそも本書に高いレベルを望むのが間違いか?)