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川崎和男 ドリームデザイナー―課外授業ようこそ先輩・別冊 (別冊課外授業ようこそ先輩) NHK「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ、KTC中央出版, 中央出版 編集 KTC中央出版


NHKに「課外授業ようこそ先輩」という番組がある。様々な分野で活躍する人を取り上げ、その人が講師となり母校(小学校)で課外授業を行う。母校の先輩として後輩であり、これから世の中を見ていく少年、少女達に伝えたいことを語りかける番組だ。
ここでは、世界的に有名なデザイナーであり、番組放送時はグッドデザイン賞の審査委員長でもあった川崎和男氏が母校である福井県武生市立武生西小学校で自身の職業でもあるプロダクト・デザインという仕事を説明し、実際に子供たちにデザインに挑戦させる授業の様子を描いている。
10年くらい前、MacPowerという雑誌が月刊誌で、コンピュータ系の雑誌がまだ全盛であった頃に川崎氏は紙上でデザインに関するコラムを連載しており、僕もよく読んでいた。下半身不随で心臓病も抱える車椅子のデザイナーという氏は非常に個性的で自己主張も強く、自ら「喧嘩師」という程議論好きでもある。言い換えると、あまり子供向けの人物ではないと思う。氏も子どもがあまり好きではないと明言している。
しかし、本書の中で児童に包丁と携帯電話をデザインさせ、自分のデザインしたものをプレゼンテーションさせるという授業を行う中で、川崎氏は児童と接する時に、萎縮させないように優しく接しつつも、決して「子供扱いしない」姿勢がよく現れていた。例えば、デザインは「わがまま」から生まれるという持論を説明するときの言葉、児童がデザインしたものを評価するときの言葉、最も高い点をとったデザインには本物のグッドデザイン賞特別賞のトロフィーを贈るという処、子どもが好きではない筈の川崎氏が児童たちにデザインの素晴らしさ、何故自分はデザイナーと言う職業を続けているのかという思いを伝えるために児童たちと真剣に向き合っている漢字が伝わってくる。