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冷たい熱帯魚 を観た

この映画は実話を元にしたフィクション(偶然にも同日に観た「ソーシャル・ネットワーク」も実話を元にしたフィクション)。
ただ、こちらは実話と言ってもITのサクセスストーリーではなく、埼玉愛犬家連続殺人事件として知られる事件だ。ブリーダとして知られる夫婦(事件当時は離婚)とその仕事仲間が4人の男女を次々と殺害する。彼らは犯行を隠すためにその遺体を包丁で骨と肉に分解、肉は川に捨てて魚の餌にし、骨はドラム缶で燃やして灰にして捨てる。主犯格の人物に言わせると「ボディ(死体)を透明にする」という手法で物証の殆ど無い殺人・遺体遺棄事件となった。
そういう事件がベースなので、実際に死体を処理するR18指定で、たしかに死体を分解するシーン等も出てくる。ただこの実話はあくまでも設定のヒントという感じで、映画自体のウェイトはその殺人シーンとは別のところにあるように思える。
例えば主犯格の村田(でんでん)と共犯の社本(吹越満)の関係。底抜けに明るいキャラクターで笑顔さえ浮かべながら、狂気というよりは日常という感じで遺体処理をする村田。呆然としながらも言われるままにコーヒーを沸かす社本。そうかと思うと激昂してまくし立てる村田と、その声に耳を塞いで座り込みそうな社本。社本の崩壊している妻と娘の家庭と、ただの幻想でしか無い幸せな家庭を象徴する社本の好きなプラネタリウム。プラネタリウムのナレーションはいう、地球が生まれて凡そ46億年。しかし、さらに46億年経てば地球も無くなってしまう。これはどんな幸せな家庭も崩れ落ちる可能性を秘めているし、どんな平凡な生活も暴力と死(崩壊)から逃れることはできないと言っている。
しかし、最後までそれを信じたくなかったのは社本自身だろう。彼は最後までプラネタリウムの幻想が続くと思っていたかった。しかし、すべてを終わりにして、最後に残った自分の娘に彼の最後の言葉を伝えたとき、まさに娘がその最後の言葉を体現してしまう。
いや、朝から観るには少々ヘヴィーな映画でした。僕と同じ列の席で見ていた、僕より少し若そうなお兄さん(おじさん?)は、途中から「マジかよ」とか「げぇっ」とか呟いてました。