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ほんと、助かった

2013年に中国の蘇州に出張した。

1週間ほどいたが、最終日は仕事も終わり、現地に赴任している日本人の社員と、現地の社員が少し観光の案内をしてくれた。

その時は連れて行かれるママに見ていたので、今思い返した時の推測だが、『寒山寺」、「蘇州古典園林」と「平江路歴史地区」という場所を案内してくれたものと思う。

日本とはスケールの違う大きさを感じさせたり、古き中国文化、生活を感じられる場所ばかりだったが、問題は「平江路歴史地区」で起きた。

ここは運河を中心にその周囲に石畳の道や橋、昔の市街が残された地区で、舟で運河を周遊できたり(しなかったけど)、古い建物の市街で買い物や食事を楽しめたりする。

案内をされながら、そんな運河脇の石畳を歩いていた時、異変は起こった。

『く、くさい…』

これは僕の心の声だった。声には出さなかった。

なんだろう、いやなんという臭さだろう。下腹にドスンとくるような強烈さ。排泄物のような臭さ。最初はちょっと臭うだけだったが、歩いて進むうちに、だんだんと臭いが強くなってくる。

臭いね、と声に出すこともできたかもしれない。しかし、ここは中国の古い街並み。ひょっとするとこれはこの辺りでは普通の生活臭なのかもしれない。真っ先に想像したのはトイレが汲み取り式でその臭いか?遠もっとほどだ。

しかし、そんな事を言っては案内をしてくれている現地の社員が気分を害するのではないかと思い、僕は声に出すのを我慢した。

つまり、声に出す事が出来なければ、もちろん鼻をつまんで歩くわけにもいかない。無防備なままで歩を進める以外になかった。

進めば進むほど臭いは強烈になってくる。どのくらい強烈だったかというと、頭がくらくらして、船酔いでもしたように気持ち悪くなってきたほどだ。

少し息を止めてみたが、歩いて進んでいくのですぐに苦しくなる。結果として息を強く吸う事になり臭さが増す。

ダメだ。吐きそうだ。どうしよう?

本当にあと少しで倒れ込みそうだった。しかし間一髪、スッと臭さが消え去った。

臭いの原因の風上に出たのだ。

奇跡的に救われた気持ちだったが、訳がわからず、周りを見た。

臭豆腐の屋台があった。運河脇に屋台を出して、ニコニコ顔のおじさんが臭豆腐を油で揚げていた。

この観光の後、会食があって、そこにも臭豆腐が出たが、その臭いはあの屋台の臭豆腐に比べれば、全く気にならず、食べることができた。きっと会食の臭豆腐は食べやすくアレンジしていたのだろう。もし屋台の臭豆腐がこの会食に出てきていたら、どんな事態になっていたろうか。ほんと助かった。

「すごいニオイ」#ジェットウォッシャー「ドルツ」


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