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赤紙−男たちはこうして戦場へ送られた 小沢真人・NHK取材班  創元社

赤紙−男たちはこうして戦場へ送られた
赤紙―男たちはこうして戦場へ送られた
戦中を描いたドラマや小説などで必ずと言っていい程登場する「赤紙」、すなわち招集令状。赤紙が届けば、その男性は兵士として出征しなければならない。
しかし、数多くの日本国民の中から、誰がどうやって対象者を決定し、赤紙を発行していたのか?という疑問に答えられた人はあまりいない。何故なら、敗戦が決まるとすぐに大本営から全市町村に対して軍の機密に関する資料を一切焼却する様に指令が出たため、召集令状の記録等も、大本営からの指令書そのものも焼却されて残っていない、とされていたからだ。
富山県の床下村の戸籍係だった人物は、村人達に赤紙を届ける役目を負っていた。彼も焼却の指令を受けた。しかし彼は、多くの村人を戦争に送り出し、戦死させておきながら、敗戦が決まったらその責任を逃れようとするかの様に証拠書類を焼けという軍の身勝手な命令に憤慨し、大半の重要資料を秘密裏に自宅に持ち帰り、床下に保管する事にした。
それは全国で唯一、ほぼ完全な形でのこされた市町村レベルの兵事資料となった。そして、そこをスタートに赤紙の裏側、つまり、当時の徴兵制度と動員の機構と日本軍の立てていた計画、そしてその計画が敗戦に向けて以下に瓦解していったのかが明らかになっていく。