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髪を切る理由

僕は髪型に殆どこだわりがない。だが、床屋と髪を切る理由にはウルサイ方だ。
僕の好みの床屋は「どのくらいに切りますか」と聞かれて、「テキトーに」と答えたら、「じゃぁ、てきとーに」と言って、切ってくれる処だ。「バッサリいって下さい」といえば、ほんとにバッサリいってくれる床屋が好きだ。
「何センチくらいきりますか?」とか、「バッサリってどれくらいですか」なんて聞き返さない床屋が好きだ。
「何センチくらい切りますか?」と聞いてくる床屋さんは多いのだが、「5センチくらい」と答えると「えっ、そんなに?」と聞いてきたりするし、「3センチ」と答えた時と「2センチ」と答えた時で、結果にそれ程違いがあるだろうか?そこまで計って切っている床屋を見た事はない。嘗ては「ちゃんと言ってくれないと困ります」と言い返された事もある。
「テキトー」にとか「バッサリ」と言っているのは、お任せするという意味なのだから、
「わかりました」チョキチョキ「バッサリいきました。もう少しいきますか」くらいの大胆さが欲しいのだ。
2年ほど前まで、子ども達が小さい時から一緒に行っていた床屋は、若い店長が仕切っていたが、しばらくするとそういう感覚が通じるようになって、とても楽だった。ただ、店長が独立してしまい、暫くすると床屋自体が閉店してしまったので、新しい床屋を探して、行き始めたのだが、なんかそういう慣れた雰囲気が無くなってしまうと、行くのが億劫になってしまった。
僕はそういう意味で、髪を切られるのは全然平気だが、行き慣れない床屋はとても苦手なのだ。
というわけで、確か、昨年の暮れに床屋に行って、それなりに刈ってもらって以来、行くのが億劫で全然床屋に行っていなかった。結果として、髪は伸び、風呂から出た時は、若干邪魔だったのでゴムで括ったりしていた。カミさんからは「そろそろ床屋に行けば・・・」と催促もされ始めた。と言うわけで、行くのが億劫なら、暫く行かなくて良いようにしようと思って、GW前に長さ2ミリの丸坊主にした。
小学校の頃は好きでスポーツ刈りにしていたので、短髪は嫌いじゃない。就職してからも、時々思い出したようにスポーツ刈りにしていた。数年前、普通に伸ばしていた髪を脱色して金髪っぽくした事があった。その時、脱色して一週間後、ちょうど根元に黒い部分が生え始めた頃に、黒い部分を残して、髪をバッサリ刈った。つまり2ミリの丸坊主にしたが、2ミリまでにしたのはその時が初めてだった。だから、今回は2度目だ。
短髪は楽だ。涼しいし、風呂上がりもすぐに乾くし、寝癖はないし・・・。
実は髪を短く切ると、毎度の事なのだが、色んな人から「どうしたの」、「何かあったの」と聞かれる。僕にとっては床屋に行って「何センチ切りますか?」で「2センチ」と答えるのも、「2ミリ残して全部」と答えるのも、差はないので、特に理由なんぞ無いのだが、何だか女子高校生が失恋して髪を切る(例えが古すぎる?)みたいに、短髪にするのは一大決心が必要な事らしい。
仕方がないから「宿題忘れた罰です」とか、「洗ったら縮みました」とか、適当に答えるのだが、大抵は納得してくれない。真っ正直に「特に理由はないです」と答えても、納得はしてくれない。ましてや、それでは面白くない。ちょっと笑えて、誰もが「なあるほど」と納得してくれるような、「髪を切る理由」を僕は探しているのだが、それはまだ見つかっていない。僕は髪を切る理由にはウルサイ方なのだ。