カメラ
もう20年くらい前の話だが、世の中にインターネットなるものが普及し始めて、パソコンを持っている一部の家庭でも、So-netとかOCNとか、もしくはベッコーアメとかでインターネットにつなぎ始めていた頃、勤め先のプロジェクトでWEBオンラインアルバムサービスの開発に携わった。
今でこそInstagramなんてもの誰でも使ってるが、当時はそもそもネットに写真をアップするということ自体が珍しかった。
だって、回線スピードが遅いのだ。
家庭の固定電話回線にモデムという機械をつなぎ、144KBとか288KBとか、今よりも何万倍も遅いスピードしか出ないから、写真のアップロードなんて、サイズの小さい画像でもとても時間がかかった。
当時のネチケット(死語だな)として、写真をサイトに貼るのはほどほどに(表示に時間がかかり、回線使用量が高騰するから)というのがあったくらいだ。
ではなぜ、そんな時にオンラインアルバムなんてサービスを作るのか?
やはりそれはカメラメーカーだから、インターネットの時代の写真の楽しみ方を模索していたからだと思う。
その頃よくチーム内で話題になったのは、日本と欧米の写真文化の違いだ。特に日本に比べて欧米は写真を大切にする文化が生活に深く根ざしている、日本はどうしてそうならないのだろう?だった。(言い換えると、日本も欧米並みになれば、オンラインアルバムサービスももっと注目される)
端的に言うと家族写真だ。
海外作の映画やTVドラマを見ていると、必ず生活空間に飾られた写真が登場する。
ちょっとステイタスの高い人物のオフィスの机には家族写真が置かれ、、壁には何かの表彰をされた記念写真、ポートレートが額に入って飾られる。
一般家庭の壁にも家族の歴史を示す写真が飾られている場面が多数出てくる。
溜まった写真は靴を買った時の空き箱に溜め込んであったりする。
ミステリーものなら探偵は犯人の部屋に飾られている写真から相手の家族構成や、嘘を見抜く。
「あなたは今、右利きを装ってらっしゃるが、このフロリダに行かれた時のパーティーの写真では、どれも左手にグラスを握っている。そしてダグラス氏を毒殺した犯人は、左手で毒の入った水割りのグラスを彼に渡したと言うことは明白なんです。あなたが犯人ですね。」
という具合だ。
日本人も写真はパチパチ撮るが、プリントした写真はアルバムの中に死蔵されがちで、なかなか家の中に飾る、職場に飾るという文化がない、これを変えられれば、写真をプリントするという行為が増え、収益に結びつくのではという話。
まあその後スマートフォンが登場して写真の楽しみ方も大きく変わった。今となっては、懐かしい論議でしかない。
ところで我が家もあまり写真を家に飾るという習慣がなかったが、最近になって玄関先にこの写真のパネルを作って掛けた。
2年前に15歳で亡くなった愛犬だ。出かける時や、帰ってきた時に、このなんとも言えない、愛嬌のある顔に癒される。
こういうところの写真の文化は今も昔もこれからも変わらないのだろうか。