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ヴォイニッチ写本の謎 ゲリー ケネディ(Gerry Kennedy)、ロブ チャーチル(Rob Churchill)松田 和也 訳 青土社

ヴォイニッチ写本の謎
ヴォイニッチ写本の謎
稀覯書の売買を生業としていたウィルフリド・ヴォイニッチはある時奇妙な一冊の古書に巡り会う。その本には本草学の本にも似て奇妙な植物の絵があったり、まるで温泉場で緑色の液体に浸かっている様に見える肥満した女性達の絵が合ったり、曼荼羅にもにた奇妙な図柄が書かれていたりしていた。しかし、そこに書かれている植物は一つして実在しないし、その他の絵は何を描いた絵なのかもわからない。
絵の余白を埋める様に注釈や、説明と思われる文章が書かれている。しかし、その文字は何語でもなく、一切読む事が出来ない文字だった。
ヴォイニッチはこの本を近代科学の先駆者と呼ばれる13世紀の哲学者、ロジャー・ベーコンが暗号を用いて書いた本であるとして公開した。そしてそれ以来、様々な人物がこの本の文字の暗号を解読し、絵の意味と、一体誰が本当の作者なのかを明らかにようと挑戦してきたが、誰一人として成功するものはいなかった。
ヴォイニッチ写本と呼ばれる書は実在していて、本書はその写本を巡る謎の歴史を追いかけたBBCの番組をベースとしたもの。ヴォイニッチ写本の魅力は、単にその絵や文が意味不明というだけではなく、その意味不明の絵が、言いようの無い人間くささというか、描いた人物の人柄が写し出されているような、「血の通った」絵である事にあると思う。