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静かなる戦争-アメリカの栄光と挫折 上/下 デイヴィッド・ハルバースタム(David Halberstam)小倉 慶郎、三島 篤志、田中 均、佳元 一洋、柴 武行 訳 PHP研究所

静かなる戦争-アメリカの栄光と挫折 上 静かなる戦争-アメリカの栄光と挫折 上
静かなる戦争(上)-アメリカの栄光と挫折     静かなる戦争(下)-アメリカの栄光と挫折
ジョージ・ブッシュ(所謂パパ・ブッシュ)とビル・クリントン。ブッシュは外交政策に優れ、湾岸戦争の勝利で国民の多大な支持を受けるものの、内政で目立った成果を上げる事ができなかった。一方のビル・クリントンは、アーカンソー州という田舎州の知事経験しかない人物だったか、その優れた理解力の早さと人脈で民主党の大統領候補となる。外交経験のないクリントンであったが、大統領選挙ではブッシュの外交政策を批判して勝利を収める。しかし、彼自身が中心に考えていたのは、内政、経済政策によって歴史に名を残す事であったし、外交にはそれほど興味も無かった。そして、クリントンが二期の大統領就任期間の上で最も苦しみ、迷走を続けたのが外交政策(ハイチ、ソマリアコソボ。。。の紛争)だった。
突然の交通事故で鬼籍に入ってしまったハルバースタム。本書の末尾で彼はクリントン以降のアメリカの外交政策にテロ対策が大きな影を落とすかもしれない事を予告する可能な記述がある。ベトナム戦争初期にベトナムに特派員として赴任し、アメリカ国内で報道されているものとは大きく異なるベトナムでのアメリカ政府と南ベトナム政府の姿に気づき、批判的な記事を送り続けた彼が9.11以降のブッシュ政権について書いていたら・・・。そう思うと残念でならない。