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がんばれカミナリ竜〈上〉/〈下〉進化生物学と去りゆく生きものたち スティーヴン・ジェイ・グールド 広野喜幸 松本文雄 石橋百枝 訳 早川書房

がんばれカミナリ竜〈上〉進化生物学と去りゆく生きものたち
がんばれカミナリ竜〈上〉進化生物学と去りゆく生きものたち
がんばれカミナリ竜〈下〉進化生物学と去りゆく生きものたち
がんばれカミナリ竜〈下〉進化生物学と去りゆく生きものたち
グールド氏が亡くなったのは淋しい限りだが、幸いにも僕にはまだ読んでいない彼のエッセイがある。それは限りはあるが、限りがあるこそ「幸福」はその価値があるのだ。このエッセイが書かれた時代、グールドは中皮腫に犯されながら、冷静に判断して、治療を続け、それを克服した。
今回の彼のエッセイの基調もこれまでと変わらない。科学と宗教はその担当する分野が本来異なるものであり、その分野を逸脱しない限り、決して相反するものではない。人間とは進化の頂点にあるものではなく、むしろ恐竜の絶滅と言う偶然によってスペースを与えられた哺乳類の中の、わずか1種しかない超マイナーな生物の傍流なのだ。今や顧みられなくなった古の科学者や、理論を現在の尺度で評価してはならない。その時代における十分に正当な理論によって打ち立てられたものも数多くある。科学(科学の常識)とは客観的なものでは決して無く、その時代と時代背景の影響を受けざるを得ないものである・・・。