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万死に一生 第一期学徒出陣兵の手記 (徳間文庫) 柳井 乃武夫著 徳間書店


いわゆる「学徒出陣」によって南方に出征した著者がフィリピンの小島で任に就き、やがて米軍の圧倒的な力に敗れが日本軍が転進した(実際には敗走&撤退)後も取り残され、残った部隊員と終戦の数カ月後まで戦い続けた記録。フィリピンでは島民たちは米国と日本の戦争に翻弄される被害者であり、ゲリラとして当然ながら強い方に味方する。結果として日本軍が制圧していた頃は(徴発という形で島民の資材を奪っていたので、憎まれていた日本兵も多かったものの)島民は日本兵を受け入れてくれていたが、形勢が逆転すると、て敗走する日本兵の掃討作戦を米軍と協力して行う。
正直な話として、ここに語られる話の多くは、これまでもテレビ等で(特に終戦△十周年という節目でのNHKの特番など)なんども聞いてきたことで、特に目新しい話はなかった。それよりもびっくりしたのは、この二年間のほとんどの時期を著者は時計も持たず行動していた。当然記録をとるメモ帳なども持っていなかったにも関わらず、終戦を知り、米軍に投稿した時、実際の日付が自分の頭の中で記録していた日付と2日しか異ならなかったこと、また、記録をとっていないにも関わらず、その間の自分たちの行動を克明に記憶していたことだ。帰国後すぐに記録に残すために文章化したそうだが、それにしてもその記憶力は相当なものであったと思われる。そのことに非常に驚いてしまった。